研究内容

光情報処理の基幹を担う、次世代光ネットワーク構築に欠かせない光スイッチング・デバイス実現のためには、大きな3次非線形光学特性を有する材料や高効率に蛍光を発する材料の開発が不可欠である。本研究では、次の2つの課題に取り組んでおり、テルライト(TeO2)を主成分とする新しい機能性ガラスの開発を行っている。

高い3次非線形光学特性を有するテルライト系ガラスの開発

   組成:TeO2-Tl2O-Bi2O3(TiO2), TeO2-Nb2O5-ZnO

ナノ結晶を用いた希土類蛍光材料の開発

   Tm3+/Yb3+アップコンバージョン青色蛍光体

TeO2材料の特異なTeO4およびTeO3多面体構造をガラス状態で制御し、透明でかつ安定な、光スイッチングデバイス、光アンプや赤外-可視変換などのアクティブ材料を開発している。

S

 近年の半導体産業の進展により、青色から近紫外へとLight Emitting Diode(LED)およびLaser Diode(LD)の波長が短波長化するなか、これらを励起光源とする新しい照明および表示デバイスの開発が進められるようになってきた。我々はゾルゲル法で作製されるSnO2-SiO2:Eu3+ガラスが近紫外光励起で高効率に赤色発光することを見出し、それがガラス中に分散したSnO2半導体ナノ結晶からEu3+イオンへのエネルギー移動により達成されていることを明らかにした(Sci.Tech.Adv.Mater., 2005年)。また、Cd, Hg, Sなどを全く含まないAl2O3-SiO2白色蛍光ガラスの開発にも成功しており(Appl.Phys.Lett., 2003年)、近紫外LEDと組み合わせた照明器具の試作にも着手している。このように、今後懸念される有害金属による環境汚染やエネルギー問題を、材料工学の観点から貢献しうる新しい分野の研究を行っている。

希土類イオン(Tb3+やEu2+)を高濃度に含有する、可視領域(400~800nm)で透明な“磁性酸化物ガラス”の合成プロセスおよび磁気光学特性(ファラデー回転効果)について調べている。これにはGaN系青色半導体レーザの急速な進歩や緑色プラスチックファイバイー通信の利用拡大が背景にあり、光資源の有効活用の理念をもとにこれからますます重要となってくるであろう。その目標を達成するために、可視波長域で透明で、大きなファラデー回転を示す光アイソレータが必要である。大きなファラデー回転特性を得るにはガラス中に含まれる希土類イオン濃度を増やすことが有効であるが、希土類イオンを高濃度に含むガラスは結晶化しやすく(失透現象)、簡単なことではない。我々は、これまで40mol%まで希土類酸化物透明なガラス状態で含有させることに成功しており、これらのガラスについて50K以下の低温で磁気クラスターが形成され、それに伴いファラデー回転特性が急激に変化することを報告している。(Chem.Mater., 2002年)。現在研究している新しいガラス系は、Tb2O3-B2O3-Ga2O3-SiO2, EuO-Al2O3-SiO2などであり、これまでにない透明で磁石にくっつく酸化物ガラスの開発を進めている(J.Ceram.Soc.Japn, 2007年)。

金ナノ粒子(GNP;球形、ナノロッド、セラミックス被覆..)表面に励起される表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した光学デバイスの実用化が進んでいる.我々は,金ナノ粒子をシリカガラス層で薄くコーティングする技術を開発し、化学的に処理されたガラス基板上に自己組織化させることに成功した。シリカ層の厚さはナノオーダーでコントロールすることができ、これを量子力学的トンネル障壁とすることで、室温での単電子トランジスタ動作を発現させることもできる。また、基板上での微粒子の凝集ドメインサイズの制御から、さまざまな二次元配列パターンを作ると共に入射光周波数の二倍波変換に成功した(Adv.Mater., 2004年)。近年の取り組みでは、チタニア層で金ナノ粒子をコーティングする独自の手法を開発し、その光触媒作用を報告した(Chem.Lett., 2006年)。

また、陽イオン界面活性剤を用いてGNPを溶液中で連結する方法を開発し,連結したGNPGNP単体とは異なった光学特性を示すこと、また,連結GNPをシリカ被覆することで,その後の連結状態を調整できることを見出し、シリカ被覆した連結GNPの自己組織化膜について,Z-scan法による3次光学非線形感受率を報告した(J.Phys.Chem.C, 2008年)。

これらの機能は光波長変換、光スイッチング、光触媒、バイオセンサーなどへの応用が期待されている。